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初学者も専門家も新・冠詞抜きでフランス語はわからない―例文比較による徹底解説

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この商品の感想

これよりいい本を先に読むべき
この本は労作ではありますが、解説が恣意的ですからよくわからない読者もいると思います。フランス語の冠詞について勉強する人はまず、復刊された「フランス語の冠詞」(松原秀治)を読んで頭の中に冠詞システムを構築し、一川氏の本書は、その後に読むとよいでしょう。これは一川氏の解説が悪いということではなく、松原氏の解説が素晴らしいということです。

他の言語の冠詞論と併用すべし
この本をお奨めします。少なくともいま日本に出回っているフランス語の冠詞論としては、本格的なものとしてはこれしかないのではないでしょうか? 研究がとても進んでいる英語においてさえ、冠詞論となるとほんの20年ほど前に活発化したばかりみたいで、何冊ものよい本が出始めたのも、ほんの10年ほど前からのようです。

そこで、できれば英語の冠詞論についての本を何冊か読んだあとにこのフランス語の冠詞論の本を読むとわかりやすいと思います。このフランス語の冠詞論だけを読んでも、まるでこじつけでも言っているかのように読者は感じるかもしれません。それは決してこの本の著者が悪いわけでも何でもなく、あまりにもフランス語の冠詞を真っ向から取り組んだ本が他になさ過ぎるので、せっかくこの著者が言ってくれていることを他の本で裏付けることができず、読者としてはまだ物足りなさを感じるのだと思います。

英語の世界では、僕がすでに買ってきた冠詞専門の本だけでも、10冊を数えます。その半数以上を読んできた僕の感触としては、この本(フランス語の冠詞論)は、とても素晴らしい。ぜひぜひ他の言語における冠詞の使い方と比べながら、このフランス語の冠詞論を検討してほしいと思います。

フランス語だけを追っかけていてはフランス語はわからないと思います。それは英語だけを追っかけても英語がわからないのと同じです。僕は英語やフランス語の他に、5年半ほど前からルーマニア語に凝っていますが、ルーマニア語で本格的に作文していると、いつも冠詞に悩まされます。そしてつくづく、ヨーロッパ諸言語の冠詞の使い方は、いくら互いに微妙に違っているとは言え、実によく似ていることを痛感します。つまり、英語・ルーマニア語・フランス語における冠詞の使い方は、おそらくは全体の95%くらいは共通していて、違いはほんの5%だけではないかという気がします。(ただし、初心者から見れば、これらの言語における冠詞の使い方は、まるで違うかのように見えます。)

ともかく、他のどのヨーロッパ諸言語を勉強している人でも、このフランス語の冠詞論の本を読んでほしいと思います。フランス語の冠詞の使い方についての知識のうち、少なくとも80%(もしかしたら95%くらい)は、英語やルーマニア語にも適用できるはずだし、仮にかなり大きく違っていたとしても、類推することによって、フランス語の知識が他の言語の習得に必ず役に立ちます。おそらくは、英語・ルーマニア語に留まらず、スペイン語・イタリア語・カタロニア語・ポルトガル語・ドイツ語などとも、フランス語の冠詞の使い方はかなりの部分が共通しているのだろうと想像しています。

そして、冠詞というものがないロシア語にさえ、フランス語や英語についての冠詞論は適用できると僕は感じています。「何を言ってる?」と専門家の人たちはお笑いになるかもしれません。でも、考えてみてください。ロシア語における否定文の場合の「否定生格」は、その対象物が「存在しない」ことを示すために主格や目的格ではなくて「生格」になっているのだと思います。そのことは、英語やフランス語やルーマニア語において、否定文の中での対象物(目的語)がとかく無冠詞になりやすい傾向と一致しています。

つまり、たとえば不定冠詞というものは、その対象物がはっきりと「存在する」ということを示す指標だと思います。そしてそれを否定して「存在しない」というとき、その対象物には不定冠詞がなくなるのですね。存在しないもの、「虚であるもの」に、不定冠詞(それがはっきりと形を持っているということを示す印)をつけることはできないわけです。

ロシア語においては冠詞はないけど、対格や主格が否定されたときには「否定生格」になることによって、それが「虚である、存在しない」ということをはっきりと示しているのだと思います。この他にもロシア語と西側ヨーロッパ諸言語との共通点はたくさんあるんでしょうけど、ロシア語があまりわからない僕としては、これ以上のことは言えません。



日本で貴重な冠詞の参考書
  フランス語をある程度、あるいは、かなりの程度学習した中・上級者にとって、フランス語を自由に読み、書き、話す際に必ず障害になるのが冠詞である。しかも、どの参考書でも冠詞の一通りの説明はしてあるものの、詳しく解説した学習書はほとんどないというのが現状である。
  本書では日本人学習者にとって難しい冠詞の問題を項目ごとに用例を添えて詳しく説明してある(例えば、de+名詞+deの項目で、「フランスの〜」という場合、ある場合にはde Franceと無冠詞になり、ある場合にはde la Franceと定冠詞が付くのはなぜか?→histoire de France/histoire de la France)。その説明は論理的で十分納得できるものであり、本書を注意深く読んでいけば、フランス語の冠詞の問題に頭を悩ませた者ならばはたとひざを打つ箇所に何度も出くわすだろう。
  本書は決して易しいものではなく、気軽に読める参考書ではないが、中級・上級を目指す学習者はたとえ苦労をしてでも読む価値のある書物である(Ca vaut la peine!)。一度通読した後、フランス語を読んだり書いたりする過程で冠詞の問題でつまずいた時に該当する箇所を読んでみるようにするのもよいと思われる。
  豊富な例文には必ず日本語訳が付いていて、辞書を引く手間をかけずに読み進むことができるようになっている。
  なお、この増補改訂版ではいくつかの項目でさらに詳しい解説がなされており、理解を一層深めることができる。

この本では冠詞はわからない
 誰を対象に書かれたのかがわからない本である。初学者には難しすぎる。専門家には目を覆いたくなるような恣意的な説明が散見される。たとえば、海に定冠詞単数がつくのが、「海は一つだから」と言うのであれば、山脈もひとつながりだから、les montagnesはあり得ないことになる。無理に理論化せずに様々な例文を紹介してくれるほうがよほどためになる。
 整合的な説明がなされているはずだとの前提で、本書を読めば、時間を無駄にすることになる。本書の説明は矛盾だらけだが、実のところ、それは仕方のないことだ。冠詞のすべての用法を矛盾なく説明できる理論は存在しないからだ。本書の罪は、そうした理論があるかのごとき幻想を読者に与える点にある。「全部」か「一部」か、「既知」か「未知」かで冠詞の用法がわかるのであれば、誰も冠詞の使い方で迷いはしない。無理に理論に当てはめるから、読者を惑わす詭弁に終始してしまうのである。
 フランス語の冠詞 (1978年)の方が数倍読みやすく、ためになる。

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